家庭菜園を始めようと思ったとき、意外と迷うのが「何を育てるか」です。
初めて家庭菜園をする人はもちろん、何年か育てていると「次は違う野菜も育ててみたい」と思うこともあります。
おすすめの野菜というと「育てやすい野菜」や「たくさん採れる野菜」が思い浮かびます。
でも、実際にいろいろ育ててみると、育てやすいからといって、その家庭に向いているとは限りません。
たくさん採れたものの食べ切れなかったり、よく育ったのに家ではあまり使わなかったりすることもあります。
反対に、収穫量はそれほど多くなくても、必要なときに少し摘めたり、採れたてがとてもおいしかったりする野菜もあります。
この記事では単純なランキングではなく、わが家で実際に育ててきた経験も交えながら、自分の暮らしに合った野菜を選ぶための考え方と、おすすめしたい野菜を紹介します。
これから家庭菜園そのものを始める方は、場所や栽培方法、必要な準備などをまとめた「家庭菜園の始め方|初心者向け総合ガイド」も参考にしてください。
家庭菜園の野菜は「育てやすさ」だけで選ばない
何を育てようか迷ったら、まず考えたいのは、自分や家族が普段食べるもの、好きなものです。
いくら簡単に育てられても、収穫したあとにあまり食べなければ、せっかくの野菜を持て余してしまいます。
そのうえで、こんなことも考えてみると候補を絞りやすくなります。
- 自分でも収穫まで育てられそうか
- 自分が無理なく管理できそうか
- どのくらいの期間、収穫を楽しめそうか
- たくさん採りたいのか、必要な分だけ採りたいのか
- 家庭で食べ切れそうか
- 採れたてならではの魅力があるか
- 育てること自体を楽しめそうか
- 一年だけでなく、何年も収穫したいか
全部の条件を満たす必要はありません。
「家族がキュウリをよく食べるから育ててみたい」「薬味に使うシソを庭から少しずつ採れたら便利そう」といったところから選んでも十分です。
迷ったら「家庭菜園で何を楽しみたいか」から選んでみよう
おすすめの野菜は、その家庭が何を求めるかによって変わります。
迷ったときは、次のようなところから候補を探してみてください。
| こんな家庭菜園にしたい | 候補にしたい野菜 |
|---|---|
| 夏野菜の定番を育てたい | ミニトマト、キュウリ、ナス、ピーマン |
| 長く収穫を楽しみたい | オクラ、キュウリ、ナス、ピーマン |
| 必要なときに少しずつ使いたい | シソ、ニラ |
| 採れたてのおいしさを楽しみたい | オクラ、キュウリ、アスパラガス、絹さや・スナップエンドウ |
| 一度植えて長く付き合いたい | ニラ、アスパラガス、ミョウガ |
| 秋冬にも家庭菜園を楽しみたい | シュンギク、コマツナ |
一つの野菜が複数に当てはまることもあります。
気になる条件が見つかったら、まずはその候補だけ読んでみてください。
すべての野菜を比較する必要はありません。
初心者が失敗しにくい野菜は?育てやすさと注意点を比較
初めて家庭菜園に挑戦するなら、収穫まで育てられそうかも気になるところです。
育てやすさは、単に手間が少ないことや、早く収穫できることとは違います。育つ環境が合っているか、注意点が分かりやすいか、途中で多少うまくいかなくても収穫を目指せるか、といった点も大切です。
比較的取り組みやすい候補を、育てやすい理由と注意点から比べてみましょう。
| 野菜 | 初心者が取り組みやすい理由 | 気をつけたいこと |
|---|---|---|
| シソ | 苗から始められ、必要な葉を少しずつ収穫できる | 虫による食害や水切れに注意 |
| ニラ | 一度株が育てば、繰り返し収穫できる | 植え付け直後の管理と、長年育てた株の更新 |
| コマツナ | 比較的短期間で収穫でき、成長を確認しやすい | 虫による食害と、種まき後の間引き |
| ピーマン | 苗から始められ、夏から秋にかけて収穫を楽しめる | 植え付け時期、支柱、水切れ、病害虫に注意 |
どれも必ず成功するわけではありません。例えば、コマツナは早く収穫できますが、虫対策をしないと葉を食べられることがあります。ニラは長く育てられますが、植えた直後から何度も収穫できるわけではありません。
まずは自分の庭やプランターの環境に合い、普段の食卓でも使いやすい野菜を選んでみてください。
ここからは、それぞれの特徴と、わが家で実際に育てて感じたことを紹介します。
家庭菜園でおすすめしたい野菜
オクラ|長くたくさん収穫する楽しさがある
夏の家庭菜園で、たくさん収穫する楽しさを味わいたいなら、オクラは有力な候補です。
わが家では何年も育てていて、記録が残っているだけでも2020年に395本、2022年には438本を収穫しました。
年によって株数や栽培条件が違うので一般的な収穫量とは比較できませんが、わが家では長い期間、次々と収穫できた野菜の一つです。
オクラは成長が早く鮮度が重要です。
採れたてのオクラは、市販品よりかなりおいしいと感じました。
一方で注意したいのが、実が大きくなるのが早いことです。
「もう少し大きくなってから」と思っているうちに収穫時期を逃し、硬くしてしまったこともありました。
たくさん採れる楽しさがある反面、収穫時期にはこまめに実を確認したい野菜です。
→オクラの育て方|採れたては抜群にうまい!種まきから収穫まで、初心者にも分かりやすく解説
キュウリ|採れたてがおいしい。ただし管理の手間も考えたい
キュウリも、家庭菜園らしい収穫の楽しさを味わえる野菜です。
わが家では2020年に126本収穫した記録があります。
これも栽培条件によって大きく変わるので一般的な収穫量ではありませんが、旺盛につるを伸ばし、次々に実を付ける姿は印象に残っています。
そしてキュウリも、私は採れたてを市販品よりおいしいと感じました。
ただし、つるを誘引したり、伸びた株を管理したり、収穫時期には実をこまめに確認したりする必要があります。

わが家では、味や収穫量には満足していましたが、管理に手間がかかると感じ、その後は栽培をやめました。
よく採れておいしいことと、自分の暮らしの中で育て続けやすいことは別。
キュウリは、そのことを実感した野菜でもあります。
ナス|長く収穫を楽しみたい人の定番候補
ナスも夏の家庭菜園では定番です。
わが家でも何度も栽培し、2020年には62本を収穫した記録があります。
味については、私の場合は「家庭菜園だから特別においしい」というより、普通においしく食べていました。
それでも、夏から長く収穫を楽しめることや、いろいろな料理に使いやすいことは大きな魅力です。
普段からナスをよく食べる家庭なら、候補にしやすい野菜だと思います。
なお、わが家では連作障害を意識して、翌年は栽培する場所を替えるようにしていました。
→ナスの育て方|苗の植え付け・支柱から収穫、秋まで楽しむコツ
ピーマン|普段の料理に使いやすい夏野菜
ピーマンも家庭菜園で育てる夏野菜の定番候補です。
わが家では2020年に31個、2021年に39個を収穫した記録があります。ただし年によって株数や条件が違うため、この数字を比較することはできません。
味については、ナスと同じく「普通においしい」というのが私の印象です。
特別な理由をつけなくても、普段から炒め物などでよく使う家庭なら、育てたものをそのまま食卓で使いやすいことが魅力です。
ミニトマト|人気の定番でも、誰にでも一番とは限らない
家庭菜園のおすすめとして、ミニトマトは外せない定番の一つです。
実が色づいていく様子が分かりやすく、自分で収穫する楽しさもあります。
ただ、わが家で実際に育てた感想は少し違いました。
結構な手間がかかりますし、味は市販のミニトマトの方が美味しいと感じました。
もちろん、これはわが家で育てたときの個人的な感想です。
家庭菜園のミニトマトがおいしくないという意味ではありません。
むしろここで伝えたいのは、人気の野菜だからといって、自分の家庭にも必ず一番向いているわけではないということです。
おすすめ情報を参考にしながらも「自分は本当に育てたいか」で選んで構いません。
シソ|必要なときに少し摘めるのが便利
家庭菜園の価値は、たくさん収穫することだけではありません。
シソは、必要なときに数枚だけ摘んで使えるのが便利な野菜です。
わが家でも複数年育てていて、こぼれ種から翌年また育ったこともあります。
半日陰でも育つ一方、日差しが強い場所では葉が硬くなったように感じたことや、虫に食べられたこともありました。
薬味などにシソをよく使う家庭なら「庭にあると便利」という理由で選ぶ価値があります。
ニラ|繰り返し収穫でき、長く付き合える
一度植えた野菜を長く育てたいなら、ニラは面白い選択肢です。
わが家では非常に長く育てていて、何度も収穫し、株分けもしてきました。
こぼれ種から新しい株が育ったこともあります。
わが家には、10年近くほぼ放置していたのに、現在も収穫できている株があります。
ただ、これは「植えたら10年間何もしなくてよい」という意味ではありません。
実際、わが家では古い株の香りが弱くなったように感じ、こぼれ種から新しく育ったニラの方を明確においしいと感じています。
長く育てられるからこそ、数年先の変化まで見ながら付き合える野菜でもあります。
アスパラガス|すぐには採れない。でも長く楽しめる
アスパラガスも、一年で終わらず長く育てられる野菜です。
わが家でも家庭菜園を縮小したあとまで残り、育て続けています。
成長が早く鮮度が大事なので、採れたてのアスパラガスは市販品よりおいしいと感じます。
一方で、オクラやキュウリのように、植えてすぐたくさん収穫するタイプではありません。
株を育てながら、何年も付き合っていく野菜です。
また、収穫期には芽の伸びが早く「まだ大丈夫」と思っているうちに伸びすぎてしまった経験もあります。
すぐに結果がほしい人より、庭の一角で長く育てていきたい人に向く候補です。
→アスパラガスの育て方|10年以上育てて分かった採れたての味と長く収穫するコツ
ミョウガ|明るい日陰を家庭菜園に生かせる
日当たりのよい場所ばかりが家庭菜園の場所ではありません。
わが家では、北側の明るい日陰でミョウガを長く育てています。
家庭菜園を縮小したあとも残り、放任気味でも育ってきました。
一方で、地下茎で広がるため、植える場所は考えておきたい野菜です。
また、花蕾が株元に出てくるため見つけにくく、わが家でも全部を収穫できていない年があります。
普段から薬味としてミョウガを使う家庭で、庭に明るい日陰があるなら、ほかの野菜とは違った選択肢になります。
シュンギク|秋冬の収穫と、その先の花まで楽しめる
春夏だけでなく、秋冬にも家庭菜園を楽しみたいならシュンギクがあります。
わが家では以前にも育てており、たくさん収穫できたことがあります。
摘み取りながら育てれば、伸びてきたわき芽を順次収穫することもできます。
そして、わが家では収穫だけで終わらせず、最後には花も咲かせました。

野菜として食べたあと、花まで楽しめたのは印象に残っています。
→シュンギクの育て方|種まきから摘み取り収穫まで長く楽しむコツ
コマツナ|比較的早く収穫を目指せる葉物
長く育てる野菜だけでなく、比較的早く収穫を経験してみたいなら、コマツナも候補になります。
わが家でも栽培経験はありますが、当時の詳しい記録は残っていません。
そのため、ここでは経験を膨らませず、多年草野菜や長く育てる夏野菜とは違い、比較的短期間で収穫を目指せる葉物として紹介します。
夏野菜とは違う時期の家庭菜園を楽しみたい人にも選択肢になります。
→コマツナの育て方|種まき・間引きから収穫まで、庭やプランターで楽しむ
絹さや・スナップエンドウ|春の採れたてを楽しむ
絹さやとスナップエンドウも、わが家で何年か育ててきました。
特に絹さやは、私は市販品より甘くておいしいと感じました。
スナップエンドウも、甘くてかなり美味しいです。
秋に種をまいて冬を越し、春に収穫する栽培もできるため、夏野菜とは違った季節の楽しみがあります。
一方、わが家では連作障害をかなり意識した野菜でもあります。
家庭菜園を複数の区画に分け、毎年同じ場所にならないよう作付け場所を替えていました。
ここでは連作障害について詳しく説明しませんが、翌年以降も続けて育てたい場合には、次にどこへ植えるかも考えておきたい野菜です。
→絹さやの育て方|種まき・冬越しから支柱、収穫まで
→スナップエンドウの育て方|秋まき・冬越しから収穫まで
たくさん採れる野菜ほど、家庭菜園向きとは限らない
家庭菜園を始めると「たくさん収穫できた」というのはやはり嬉しいものです。
ただ、実際に育ててみると、採れれば採れるほどよいわけでもありません。
わが家ではサンチュを育てたとき、何度も大量に収穫できました。
あまりにも多いので大容量のゴミ袋で収穫していました(笑)
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ところが、わが家では味がさっぱりしすぎていると感じ、たくさん採れても食べ切るのが大変でした。
トウガラシも1株から十分すぎるほど採れましたが、そもそも家庭でそれほど大量には使いません。
バジルもよく育ち、香りもよかったのですが、採れすぎて消費に困った経験があります。
ただし、同じ野菜でも、育てる株数や家庭で食べる量によって、ちょうどよい収穫量は変わります。
家庭菜園では、育てる → 収穫する → 食べるところまで考えて野菜を選ぶと、自分の家庭に合ったものが見つけやすくなります。
「たくさん採れるか」だけでなく、その量をわが家で使えるかも大切な判断材料です。
育てたい野菜が決まったら、何株植えるかも考えてみましょう。家庭菜園で植える株数の目安も参考に、無理なく食べ切れる量から始めるのがおすすめです。
「育てる野菜」と「買う野菜」があってもいい
いろいろな野菜を育ててきましたが、私は「家庭菜園で育てれば、何でも市販品よりおいしくなる」とは感じていません。
わが家で育てた中では、オクラ、アスパラガス、キュウリ、絹さやなどは、市販品よりおいしいと感じました。
一方、大根や人参、ミニトマトでは、市販品の方が自分の好みに合うと感じたこともあります。
もちろん、品種や栽培条件によって味は変わりますし、これはあくまで私自身の経験と好みです。
だからこそ、家庭菜園では「これは育てる。でもこれは買う」と分けてもよいと思っています。
限られたスペースだからこそ、自分で育てたい理由がある野菜を選ぶのも一つの考え方です。
家庭菜園の価値は、味だけでもありません。
必要なときに少しだけ収穫できるシソ。
何度も収穫できるニラ。
毎年芽が出るのを待つアスパラガス。
次々と実ができるオクラ。
種をまいたものが育ち、収穫して食卓に並ぶこと自体にも、買った野菜とは違う楽しさがあります。
迷ったら、育てたい野菜を2~4種類くらいまで絞ってみよう
ここまで読んで「これなら育ててみたい」と思うものが2~4種類くらいまで絞れれば十分です。
実際に最初からすべて育てる必要はありません。
1種類から始めても構いません。
たくさん収穫する楽しさを味わいたいならオクラ。
必要なときに少し使いたいならシソ。
長く付き合いたいならニラやアスパラガス。
秋冬にも収穫したいならシュンギクやコマツナ。
家庭菜園に何を求めるかによって、おすすめは変わります。
そして実際に育ててみると「これは来年も育てたい」「これは買った方が自分には合っている」ということも少しずつ分かってきます。
家庭菜園で育てる野菜に、誰にでも共通する一番はありません。
自分や家族が食べるもの、育てられる場所、かけられる手間、そして「育ててみたい」という気持ちも含めて、自分の家庭に合う野菜を選んでみてください。


